シェラレオネ。最初に相談を受けた時、里美は珍しく不安を覚えた。
あまりにも危険な土地なのだ。世界で一番、平均寿命が短い土地と呼ばれ、
五歳まで生き延びる子供は、日本と比べると絶望的に少ない。
当然、教育が完備している筈がない。
そんな場所にも日本人が居る。
宣教クララ修道会のシスター達だ。
シェラレオネには世界でも有数のダイヤモンド鉱山がある。
豊かな未来を約束する筈の鉱山は、皮肉な事に凄まじい内戦をもたらした。
少年達ですら無理矢理兵士にされ、逆らう者は両手首を切断されたという。
ようやく内戦が終わり、国は落ち着きを取り戻したかにみえる。
だが、人々の暮らしはまだまだ厳しい。
そんな状況下で宣教クララ修道会のシスター達は、子ども達の未来を守る闘いを続けている。

シスター達の闘いは至ってリアルだ。
今日、子供たちが食べる物が有るか無いか。
まずはそれである。
彼等にとって何よりの楽しみであり、栄養補給の源は日本からの救援物資で賄われる学校給食である。
子供達は皆、給食を食べる時には「神様と、日本の皆さんありがとう」
そう言ってから食べるのだという。
少ない栄養補給の機会であるが、中には給食を全部食べてしまわず、
家にいる幼い兄弟達に持ち帰る者も居る。
互いに助け合うのが当たり前であり、例えば飴一つをもらっても、
皆で分けようと細かく砕く。
過酷な状況に於いても、子供達は懸命に勉強し、己の未来を信じて
日々の努力を惜しまないのだ。

それほどまでに日々を感謝して生きる子供達だが、長生きは出来ない。
彼等を容赦なく襲うのは伝染病である。
HIV、マラリア、ありとあらゆる伝染病が蔓延している中、
僅かな栄養しか与えられない子供達が、どうやって命を永らえることが出来るというのか。
それこそが『五歳までしか生きられない国』と呼ばれる由縁であった。
シスター達の悩みの一つ、医療器具や薬品の充実を図るのが今回の俊輔の目的であった。