中学を卒業する頃には、千絵は和洋中ほとんど全ての料理をこなせるようになっていた。

その経験が千絵の人生も決めた。
来年から千絵は、フランスへ菓子作りの修行に行くのだ。

時折、伸子は気紛れに台所に立つのだが、相変わらずのドタバタ振りである。
それにしても、今朝の白塗りは特にひどい。

「で?何をやろうとしてたの」

千絵の質問に伸子は、しどろもどろになりながら答えた。

「つまり、クリスマスケーキを作ろうとして、間違えて粉を頭からかぶったと」

どう間違えたら、そうなるんだろうと千絵は改めて呆れ直した。

「なんで今年に限って、そんな無謀な真似を」

「ははは、母さんもそう思うよ」

伸子は真っ白なまま、ニマァ、と笑う。
なんだか暗黒舞踏の役者のようだ。

「とにかく、お風呂に入ってきなよ。後片付けしとくから。ケーキは後で私が作るから」

「だめ!母さんが作るの!」

頑なに言い張る母に、千絵は腹が立ってきた。
結局、後片付けするのは千絵なのだ。

「なぁんでそんなに意地はるのよ」

伸子は恥ずかしそうに、うつむいた。
白塗りで判らないが、真っ赤な顔に違いない。

「ちぃちゃん、来年から留学だから。今年が最後のクリスマスでしょ。
今まで、何もしてあげられなかったから」

千絵は返す言葉を失い、立ちすくんだ。

おわりへ