「どうした、祐輔。」
仲間が二、三人声を
かけてきた。
奴等には何となく
見せたくなかった
のかもしれない。
なんでもねぇよ、と
祐輔は答えた。

祐輔はもう一度少女
に謝ろうと、勢い良く
頭を下げた。
その途端、ポケットの
中身が辺りに散らばり
派手な音をたてた。

「わぁ。全財産!」

慌てる祐輔を見て、
初めて少女は笑った。

500円玉が一枚、溝に
はまって取れなかったが
、この笑顔と引き換え
なら安いもんだ、と
祐輔は思った。

「俺祐輔。あんたは?」

「琴美。ねぇ、500円
取れないの?」

「あ、うん。見えてんだ
けどな。」

「だったらこれあげる。」

琴美は鞄から
缶コーヒーを取り出し、
祐輔に渡した。

「間違って買ったの。
あたし飲まないから。
甘いのは嫌い。あげる。
じゃあね。」

「あ、あんがと。」

とりあえず、名前が
判っただけでも進歩だ
よな、と小さくつぶやき
祐輔は仲間の元へ
戻った。

缶コーヒーは飲まずに
部屋に飾っておくつもり
だった。