健太は、おっとりした性格に見られ勝ちだが、要は慎重なのだ。彼は、父の所を訪ねると決めた時から何度となく、地図を見てはシミュレーションを繰り返していた。

既に彼の頭の中には、プレゼントを見て喜んでくれる父の笑顔が浮かんでいる。

弟の手を握り健太は、母にガッツポーズを見せ電車に乗り込んだ。

最初の乗り継ぎは名賀浜駅。翔太は、初めて乗る電車にすっかり魅せられている。
窓から目を離そうもしない。健太にしてみれば、大変にありがたいことだ。
健太自身も景色を楽しみたかったが、駅名だけが気になって、それどころではない。

「舞原を出た。確か、後ひとつ。この電車は、しんかいそくだからな。よし、バッチリだ」

「なにがバッチリなの。にぃちゃん」

いつの間にか、健太は自分の想いを声に出していた。

「翔太、次の駅でのりかえるからな」

「うん」

名賀浜駅のホームに到着した。降りたホームの反対側に来る福居市行きの電車に乗って、鶴賀で降りねばならない。

「青い色の電車。
青だぞ、青…
来た。あ、でも色が違う。白だ。これは違う。福っていう字も書いてない。」

健太は懸命に、地図と電車の行き先を見比べている。

三へ