「それでも、なんとかして、あたしを幸せにしたいって想いで頑張って頑張って頑張り抜いてさ。
ようやくデビューが決まった途端に逝ってしまった」

彼女の瞳が枯れ葉を見つめている。

「彼が大好きだったボーカリストがエヴァなの。
エヴァみたいに人の胸に届く音楽をやりたいってさ」

枯れ葉を一枚、その細い指でつまみ上げた。

「あたしの胸には、とっくに届いてたのにね…
あいつの残した言葉とか想いとか、全部枯れ葉になってしまった」

僕の前で彼女は確かに泣いている。
人には見えない透明な涙を流している。

僕は、あのライブの夜、エヴァに言った言葉をそのまま彼女にも伝えた。

「枯れ葉って…次の木を育てる為に散るんですよ。
それに、たくさんあると体を温めることも出来ます」

エヴァは僕がそう言うと、小さく微笑んでステージに向かった。

今、僕の目の前に居る女性も同じように小さく微笑んだ。

「…あなた、若いくせに何だか素敵よ。
ありがと。暖まった」

じゃあね、と軽く手を振り、その女性は公園を出て行った。

さてと、僕も仕事に戻るかな。

今日中に残り20組、恋を実らせなけりゃならない。

天使っていうのはクリスマスが終わるまでは忙しいんだ。

僕は背中の翼を広げて空に舞った。

エヴァみたいには歌えないが、恋の歌を口ずさみながら広場を目指した。
さて、次は誰に恋の矢を刺そうかな…