その物体は、玉虫色に輝く金属で覆われていた。
古代文字らしき文様が周りを囲み、それが何らかの祭祀に使われていた事を示していた。

直径50cm程度の球体には、手がかりとなるような物は他に見当たらない。

考古学者と言語学者が中心になり、解読が急がれた。


今日も、プロジェクトチームのリーダー・斎田は、不機嫌な顔を隠そうともしないまま、出勤してきた。
リーダーたる者としては、最低の態度だと斎田自身も判ってはいる。

だが、妻の事を考えると、不機嫌にならざるを得なかった。仮面夫婦の状態が、もう二年も続いている。
だが斎田は、現在の地位も名声も結婚によって手に入れたのだ。離婚は出来ない。

妻の尚子もその事は理解しており、好き勝手に暮らしている。
昨日の喧嘩も、多額の請求書が原因だった。

斎田にとって、妻は金を食う害虫でしか無い。
だが、それも、この研究で成果を出せば変わる。

「斎田先生、卑弥呼の解析が終わったそうです」

「そうか。すぐ行く」

卑弥呼とは研究所にあるスーパーコンピューターの名前である。

卑弥呼は、球体の発見以来、その解析を一手に引き受けていた。

その結果が出たという。

斎田は急いだ。

二へ