すー、っと動き出した自転車はたちまち転げる。

男の子の顔がくしゃくしゃ、っと崩れた。
が、泣かない。
ぐっと唇を噛みしめている。
父親が駆け寄ってきた。

「慎二、なぜ今こけたか判るか?
おまえ、怖くて止まっただろ。先に進むのは怖いんだ。
それは判る。たまには休むのもいい。
けど、止まっていたら先には進めない。
ゆっくりでも良い。漕ぎ続けなきゃ先には進まない」

男の子は大きくうなずいた。

慎二もその言葉に、深くうなずいていた。

(なんだ、俺は泣いてるのか)
頬をつたう涙に慎二は驚き、笑った。

「ゆっくりでもいいから漕げ、か。誰だか知らないけどありがとう」
慎二は見ず知らずの父親に一礼し、公園の出口に向かった。


後ろから、男の子の歓声が聞こえてきた。
どうやら乗れたらしい。
父親の励ます声も聞こえてきた。


「よーし、そのまま行け。うつむくな、前を見ろ。進む方向を見ろ」