「孝志ーっ飯買って来てくれ」

「はぁい」
孝志は白衣をハンガーにかけると、院外に飛び出した。

研修医としては二年目だが、その穏やかな性格が災いして、雑用を任せられる事が多い。

国道沿いのコンビニに向かう孝志を担当医の織田が見ている。

傍らの看護師が話しかけてきた。
「織田先生、スパルタですね」

「あ?しゃあねぇべー。奴の希望なんだから。おまえ知ってるか?奴のあだ名」

織田がニンマリと笑った。
「ウルトラマンだぜウルトラマン」

こらえきれなくなったのか、大声で笑い出した。

「知ってますよ、小児病棟では有名ですから」

「そうなのか?」


看護士はスペシウム光線の真似をしながら、織田に言った。
「孝志先生はウルトラマンだからね、必ず病気怪獣をやっつけてやる。だから頑張って!」

織田がまじまじと看護師を見つめた。
「マジで、そんなこと言ってんのか」


「マジっす。実際、そのおかげで回復した子もいますよ」



孝志はコンビニの帰り道、病院を見上げた。
志穂が闘った病院だ。
来月から、小児科の医師として勤務することが決まっている。

辛い闘いが待っているかもしれない。

だが、俺はウルトラマンなのだ。

「なぁ、志穂。お兄ちゃんは強くなったかな」


暮れかけた空に一番星が光る。

「お兄ちゃんなら大丈夫!」

その星が答えた気がした。


「孝志~!弁当まだか~走れ~っ」

「はいー」
孝志は走り出した。

今度は、負けない!