うるうるした目のまま、黄色い熊に向かう。
灯りを点したその時、熊の前に若い男が立った。

「…あ。あんた、八田さんとこの洋ちゃんかい?」

「熊さん、久しぶり。」

「えらく立派な姿になったもんだ」

はっちゃんの弟、洋であった。
洋は、仕立ての良いスーツから名刺を取り出し、熊に渡した。
『丸本不動産営業第二課部長・八田洋』

「え!洋ちゃん、部長さんなのか。あの鼻垂らしがなぁ…」

「鼻なんか垂らしてないよ。熊さん、相変わらずだなぁ」
朗らかに笑う洋は、後から兄貴を連れてくるよ、と
言い残し去って行った。

「あの洋ちゃんがねぇ…頑張ってたもんなぁ、兄貴の
苦労する姿見て」

またもや目がうるうるする。
もう、歳なのかもしれないな、とぼやきながら熊は店を開けた。

「くーまさーん!腹へった~っ!」と飛び込んできたのはうきゅだ。
「あたしも何か食べるのーっ!」とよしぞうも続く。
慌てて目を拭う熊を見て、二人は「また泣いてる」と笑った。

六へ