落語には色々な夫婦が出てきます。
もともと落語ってぇのは庶民の暮らしっぷりをお話にしたものですから、
そんなに酷い夫婦は出てこない。
大抵の夫婦が割合と仲がよろしい。
その中でも、拙が好きな夫婦者がおります。
三年目、という落語に出てくる夫婦でして、
これがご多分に漏れず大層仲がよろしい。

ところが一つだけ術無いことがある。
奥さんが体が弱うございましてな、
ある日、寝込んじまったまま永く病の床についちまった。
旦那の方も懸命に看病するのですが、どうにも良くならない。
いよいよいけないって時に奥さんがこう言うのですな。

「お前さんが二人目の奥さんと仲良く暮らすかと思うと、
それが悔しくて死んでも死にきれない」

もちろん、旦那は後添えをもらう気など有りはしません。
「何を馬鹿なことを。そんなこと心配せずに早く良くなっておくれ」

「いいえ、自分の体のことは自分が一番判ります。
おねがい、どうか約束して。私が死んでも後添えはもらわないで」

「もちろんだ。誰がなんと言おうと、一生一人でいるよ」


二へ