「おはようございます」

「おはようございます」
既に店内の掃除は学生バイトの江美が済ませている。
にこやかなその笑顔に安堵感を覚え、美奈子にも笑顔が戻った。
微笑みを保ったまま、品出しに取り掛かる。

平日の午前中というのに店内は、早くも学生で一杯だ。
授業はどうしたのかとは思うが、取り立てて何か言おうとは思わない。
美奈子にも学校をサボった経験はある。
こんな天気の良い日だ。教室に居るのが苦痛に思えても仕方無い。
いつか明日香にも、こんなふうに友達と笑いあいながら雑貨を漁る
日が来るのだろう、その思いが美奈子をさらに微笑ませた。

二列目の棚を整理し次の棚に向かったところで、その微笑みが消えた。
雑貨屋で見かけることが少ない、いや、このテナントビルで
見かけることのない存在がそこにいたからだ。

髭面の大柄な男が、窮屈そうに腰をかがめ、きょろきょろと辺りを
見回している。
通りかかる女の子達の好奇の視線をものともせず、男は熱心に店内を
見渡している。
女子中高生で溢れる店内で、その姿はあまりにも異様に目立つ。
痴漢か変質者の類かもしれない。
美奈子は思い切って声をかけてみた。