転がっていたビールのケースを踏み台にし、灯りが漏れている穴から
中を覗き込んだ。

「…!!」

こちら側に背を向けてマネキン人形が立っている。
髪は短いが、くびれた腰や丸みを帯びた尻で女性と判る。
マネキンは裸のままだ。
その前に、これもまた裸の男が立っている。
マネキンではなく、歴とした人間だ。
湿気を帯びた六月の夜、空調など無いコンテナの中で、
男は滝のような汗を流しながら、マネキンに向かって両手を上げた。

上げた両手がマネキンの首にかかる。

「ぐふぅっ!」
異様な掛け声をあげ、男は全力で首を絞め始めた。
先程からの声の正体はこれであった。
息を呑み、見守る高畑さんの前で、男は手を緩めた。

もう一度。
もう一度。

何度も何度も繰り返し、男はマネキンの首を絞めた。
その口に笑みが浮かび、ダラダラと涎が垂れていたという。

高畑さんは、降りだした雨を厭うことなく自転車に跨った。
早くここから離れたい、その気持ちで一杯であった。

二日後。
うっかり寝過ごした高畑さんは、いつもの電車に乗れなかった。
手持ち無沙汰に次の電車を待つ彼の前で、楽しげに話すカップルがいる。
どうやら今から旅行らしい。
男の笑顔に見覚えがあった。

コンテナの男だ。
たまらなく優しい笑顔だったという。

その後、高畑さんは、そのカップルを見かけてはいない。

「男の方なら時々、出会うけど」