既に卑弥呼は、この言語の基本パターンは認識済みだ。

平石は早速、新たな文様を入力した。

たちまち、現代の日本語として変換され、画面に文字が現れる。

「その者の恐れる気持ちが強ければ強いほど、恐怖は具象化する」


「恐怖は具象化…」
平石は、先程からの不安を抑えられなくなってきた。

(馬鹿な。巨大な蜘蛛なんか居るわけが無い)

が、平石の恐怖があまりにも凄まじかっ為、巨大蜘蛛は忽ち姿を現した。

「いやぁぁぁぁっ!」

必死で逃げようとした平石の首が飛んだ。
蜘蛛の牙に噛みつかれたのだ。
平石は己が生み出した蜘蛛に殺された。
生み出した主人を殺した蜘蛛は、存在意義を失い消えた。
後に残ったのは、平石の胴体だけだ。


既に、研究所のあちこちで悲鳴が聞こえだした。

蛇や蜘蛛に追いかけられる者もいる。

ゴキブリの群れを体中に集らせた女子事務員は狂ったらしい。

恐怖映画のキャラクターがあちこちに現れている。

斎田は球体を停めようとしたが、無理だった。

彼の首筋に妻が噛みついてきたからだ。
尚子の頭から脳漿がはみ出している。
昨日、斎田が殺した時のままだ。

悲鳴を上げようとしたが、それすら叶わずに斎田は息絶えた。

球体は作動し続けた。

その時、研究所を視察に訪れていた総理にも球体の効果が現れた。


総理が最も恐れている事が現実に起ころうとしていた。



若狭湾沖に、未確認の飛翔物体が突然現れた。

真っ直ぐに原子力発電所を狙っている。
総理が最も恐れている事。
それは
『K国の核ミサイルによる原子力発電所攻撃』
だった。