「なぁ、最近の先生、えらく甘えるよな」
乱蔵が嬉しそうに言う。
可愛くて仕方ないらしい。
彼が先生と呼ぶのは一匹の灰色の猫である。
乱蔵は、その猫が猫の王だとは知らない。

もっとも、彼が言う通り、最近の先生の甘えぶりは異常である。
暇を見ては体全体を擦り付けるように乱蔵に甘えるのだ。
さんざん甘えた後、先生はツイっと外に出た。
早速、乱蔵家の番犬である福が冷やかしにかかった。
「先生、なかなかの甘えぶりですね」

「福やんか。はは、見られちゃったか」

福はニヤニヤと笑いながら鼻をひくつかせている。
「見なくても判りますよ。先生の体中から乱蔵父さんの匂いがする。
熊みたいな匂いだ」

先生と福は顔を見合わせて笑った。

「そうだよね、確かに匂う。それが狙いなのさ」

「え?」

先生は一跳び、ひょんと屋根に上がると、体を思い切り
膨らませた。
そして、ぶるぶるっとその体を震わせる。
先生の柔らかな毛が風に乗って宙を舞った。