久雄が駅に着いた頃合を見計らって、塀から顔だけ覗かせる。
残業で遅くなっても決して間違えない。
塀から顔を出して、きっちり七分後、久雄が到着するのである。
どんなに疲れて帰っても、久雄は塀から覗くシロを見ると微笑んでしまった。
ある日のこと。
シロが前足を引きずっていた。
散歩中に怪我したかなと獣医に連れて行った。
前足を診ていた獣医は、ゆっくりと目線だけを上げて久雄に尋ねた。
「ご家族で、どなたかタバコを吸われる方は居ますか?」
「いえ、誰も…」
「ふむ。だとするとどういう事かな…」
獣医は前足をそっと持ち上げると、久雄に臭いを嗅ぐように言った。
「わかりますか」
「タバコ…の臭いだ」
「ね?どこかでタバコを踏み消そうとして火傷したんですね」
治療を終え、帰宅した久雄はシロの小屋の周りを調べてみた。
踏み消された吸い殻が有った。
道路から転がってきたか、誰かが投げ入れたかは判らないが、シロが消してくれた事は確かだった。
シロはご褒美にウィンナーと、いつもより長い散歩を貰った。
シロが家族の一員になってから五年目の春。
久雄の家に、もう一つの幸せが訪れた。
次女の育美の誕生である。
三へ
残業で遅くなっても決して間違えない。
塀から顔を出して、きっちり七分後、久雄が到着するのである。
どんなに疲れて帰っても、久雄は塀から覗くシロを見ると微笑んでしまった。
ある日のこと。
シロが前足を引きずっていた。
散歩中に怪我したかなと獣医に連れて行った。
前足を診ていた獣医は、ゆっくりと目線だけを上げて久雄に尋ねた。
「ご家族で、どなたかタバコを吸われる方は居ますか?」
「いえ、誰も…」
「ふむ。だとするとどういう事かな…」
獣医は前足をそっと持ち上げると、久雄に臭いを嗅ぐように言った。
「わかりますか」
「タバコ…の臭いだ」
「ね?どこかでタバコを踏み消そうとして火傷したんですね」
治療を終え、帰宅した久雄はシロの小屋の周りを調べてみた。
踏み消された吸い殻が有った。
道路から転がってきたか、誰かが投げ入れたかは判らないが、シロが消してくれた事は確かだった。
シロはご褒美にウィンナーと、いつもより長い散歩を貰った。
シロが家族の一員になってから五年目の春。
久雄の家に、もう一つの幸せが訪れた。
次女の育美の誕生である。
三へ