行きつけの屋台にその爺さんは居た。
何処かで見たことがあるんだが思い出せない。
かなりの年齢に達しているようだが、
赤いジャケットとジーンズが見事に決まっている。
こういうのが本当のお洒落ってんだな、と俺は感心した。

爺さんは、出汁のよく沁みた大根とスジ肉を肴に
コップ酒を呑んでいる。
何やらブツブツと文句を言っているようだ。
屋台のオヤジが俺を見て、肩をすくめた。
俺も目配せで答えながら、男の隣に座った。

「おやっさん、こんにゃくと竹輪麩。卵もね」

「あいよ」
この店のおでんは絶品だ。いつも、仕事が終わってから
一杯だけやるのが、俺の唯一の贅沢だ。
おでんは子供達への土産にもなる。

「へい、お待ち。奥さんはどう?年末は帰れるの?」

「うーん…なかなかね、長引いてるんだ。入院して、もう
半年になるなぁ」

「あんたも大変だね、休み無しで働いてんだろ?
体は大丈夫かい」

オヤジの言葉は、おでんと同じく暖かだ。
ところで爺さんは、まだぼやいてる。
何をそんなに愚痴る事があるのだろうと
耳を傾けてみた。

二へ