やっと見つけた。
間違いない。
停留所と書いた標識が立っている。
十分後、それはやって来た。

古いバスだ。
ボンネットバス、だっけか。

「乗りますかぁ?」

驚いたことに今時、車掌が乗っている。
長い髪を制帽に隠してはいるが、女性だと分かる。
紺色の制服が実に良く、身に馴染んでいた。

「あ、あぁ。あの、このバスは駅に」

「駅ですかぁ。行きますよぅ」
のんびりした返事に誘われるように、私はバスに乗り込んだ。

乗客は私以外に居ない。
「駅までは幾らですか」

「どちらの駅です?二年前?五年前?」

訳の分からない返事が返ってきた。

「二年前…って」

「あ、お客さん初めてですかぁ。このバス、お客さんが帰りたい時間に戻れるんですよぅ」

何を言ってるのだろう、この車掌は。

「何かの企画?村興しのイベントか何か」

「違いますって。試しに一時間前に行きましょうか」

発車オーライ、一時間前ー!

軽やかな声に運転手が穏やかに応える。

「了解。一時間前」


バスは、振動もせずスルスルと走り出した。

窓の外を景色が流れる。
文字通り、流れて行く。
「一時間前ー、場所は…ここ~」