闘病生活一年と7日。

志穂は、あれほど憧れていた家に戻ってきた。

物言わぬ冷たい体で、父の腕に抱かれて。

幼い体で必死に闘った志穂は、ようやく帰ってこられたのだ。


孝志は、志穂の枕元で絵を描き続けている。
その絵の中では、孝志はウルトラマンになって志穂の体の中の怪獣をこてんぱんにやっつけている。

クレヨンで何度も何度も怪獣を塗りつぶす。

「このやろー、えい、どうだっ」

その声がいつの間にか泣き声に変わっていった。

孝志は大声で泣きながら、絵を描き続けていた。



七夕の笹が揺れている。
孝志は、今年、短冊にこう書いた。


『ウルトラマンになれなくてごめんなさい。志穂が天使になれますように』

珍しく晴れ上がった夜空。
風も吹かないのに、その短冊はいつまでも揺れていた。

志穂が見ているのかな、咲恵はそう思い、小さく手を振った。