次の週末、熊は家族を連れて故郷へ帰った。
母は、熊よりも孫の顔を見て喜んだ。

「さて、あんたらに何を作ろうかねぇ…」
台所に立つ母を熊が追いかける。

「母さん、見てて良いかい?」

「あぁ?いいけど何だい?」
熊は、その週一杯、いぶと話合っていたことを母に言った。

「会社を辞めようかと思う」

「何悪いことやった!」

「違うって。リストラじゃないって。退職するの。
俺、食べ物屋やりたい。母さんの店のような」
母は持っていた包丁を置くと、熊を見つめた。

「あんた、本気かい。そりゃ、少しはできるだろうけどね」

事実、熊は母の手伝いをしていたおかげで、ある程度の
料理は出来る。
調理師免許も取得していた。

「やりたいんだよ。もう今が最後のチャンスだと思う」

「ふん。まぁ、やってみるといい。だけど一つ言っておくよ。
あたしの店はあたしだけで終わらせる。
店をやりたいなら、自分の甲斐性でやんなさい。
いいね?」

「もちろんだ。母さん、だから俺に母さんの
料理を教えてくれ」

「よし。台所に立って、料理を教えてくれと
言ったからには、あんたはあたしの弟子だ。
まずはうさぎ跳びからだよっ!」

「はいっ!って母さん、ボケはいらないから」
母と熊は大声で笑った。
何事か、と娘が見にきた。

七へ