そのままの勢いを殺さず、十郎太が回転を始めた。
太郎丸直伝の技である。
巨大な殺人コマとなった十郎太が次々に僧兵達を
斬り刻んでいく。
受け止めようと試みる者も居るには居たが、受け止めた刀ごと
断ち切られてしまう。

ひょうすべが呆気に取られて見守る中、僧兵は一人だけを
残して肉塊に変わってしまった。
十郎太が回転を止める。
少し遅れて、その足元に旋風が舞った。

先程までの勢いは何処へやら、ただ一人残った僧兵は
無様なまでに震えている。

「己一人を残した理由は既に判るだろう。
天海は何処だ。言え。言わねば斬る」
十郎太の静かな声色が、なおのこと恐ろしく感じられる。

「て、天海様は、ひえ」
その途端、ぐぼっと籠もった音を立て、僧兵の体が膨らみ始めた。
見る見るうちに体が倍以上に膨れ上がっていく。

「む。いかん、ひょうすべ、逃げろ。こやつ、何か仕掛けられている」
十郎太だけなら、身を隠すのはいとも容易いことである。
が、ひょうすべを置いて逃げるわけにはいかない。

「くそ。こうなれば、俺の体を盾にするしかないか」
十郎太が覚悟を決めた時、大きな壁が地面から盛り上がった。
ぬりかべであった。既にぬりかべも血まみれであったが、
僧兵に背中を向けると、十郎太達に笑いかけた。

「わしがお守り申す」