「そうはいかない」

全員が動きを止めた。
振り向くと、そこに院長が居た。

「雄司君、あなたやっつけたんじゃないの?!」
「確かにやったよ、窒息したはずだ」

焦る雄司に院長は微笑みかけた。
「うん。確かに息は止まったね。だが、忘れないで
くれたまえ。私は医者だよ。止まった心臓を
動かすなんてお手のものだ。」

院長の背中から生えた手が、一本、胸の中に
突っ込まれていた。
「直接、心臓をマッサージしなけりゃ
ならんかったがね。結構痛かった。
お礼はさせてもらう」
言うなり、院長の腕が伸びて麻理を掴んだ。

「きゃぁぁぁっ!」

「麻理っ!」
雄司が必死で院長の腕にしがみつく。
麻理を振りほどいた。

「は、早くキーを入れてしまえ、こいつを押さえている
間に逃げるんだっ!早くっ!」

「でも雄司君!」

「いいから行けっ!早く、早くしろ」
雄司が言うまでも無かった。
魔方陣が勝手にキーを吸い込み始めたのだ。
一層強くなった風が友香達四人をさらうようにして、
魔方陣に運んだ。

「雄司君っ!いやぁっ!雄司君っ!」

友香の悲鳴が徐々に遠ざかる。
ブゥン、と唸りを上げて魔法陣は光を消した。

「はっはっは!行っちまったぜ、院長っ!ざまぁみろ!」
雄司が笑う。

「くそ、最後まで貴様…許さん、お前は私の餌にしてやる!」

院長の顔から微笑みが消えた。
めきめきぃ、っと音を立てて顔が縦に裂けていく。
顔全体が口になっていく。