「まめ太とやら、そなたの尻尾にまとわりつく匂いに覚えがある。
それは先生の匂いじゃな?」

「はい、僕、雲外鏡に遠くまで放り出されちゃいまして。今、家に戻る旅の途中なんです」

守り樹様は、労るようにまめ太を見守っている。
「それで森の皆に黙って出て行くのじゃな」

まめ太は、照れくさそうに耳の後ろを掻きながら答えた。

「ええ。この森、すごく気持ち良いですからね。
これ以上、皆と一緒に居たら別れがつらくなる」

「わかった。好きにするがいい。せめてもの御礼じゃ、これを持って行きなされ」

守り樹様の枝から、一枚の葉っぱが落ちてきた。その葉っぱから、懐かしい匂いがする。

不思議に思ったまめ太が近づいてよく見ると、葉っぱには灰色の毛が一握り付いていた。
忘れもしない、先生の尻尾の毛だ。

「これは…」

「先生が御守りにと残して行ったものじゃ。我々にはもう必要ない。おぬしが先程くれた、勇気の心がある」

「あ、ありがとうございます」
まめ太は、先生の尻尾の毛を大事に胸に付けた。
それは安らぎと力をまめ太に与えた。

「がんばって行きなさい」

「はいっ!必ず戻ります!」

まめ太は森を抜け走り出した。
その胸に先生への想いを抱きながら…