その頃、俊輔はようやく隣村に付いた。
村の広場に車を停め、クラクションを鳴らし、
村中に響き渡る声でオカンボの名を叫んだ。
「オカンボッ!どこにいますか!子供が産まれそうなんだ、
助けてくださいっ!」

村人が次々に広場に集まってきた。
その中に一人、よぼよぼの老婆が居る。
「やれやれうるさいねぇ…おや、珍しいお客さんだ。
あんた、学校作ってる人だね?日本人の…シュンスケとか言う」

驚いたのは俊輔の方だ。
「な…なんで御存知なんですか」

オカンボは持っていた杖でトン、と地面を突いて笑った。
「このオカンボに知らないことは無い。さ、そんなことどうでも良い。
子供が産まれるのじゃろ?急がねばならん」
俊輔を置いてさっさと車に乗り込む。

「あ、はい。ありがとうございます」
すっかり気を飲まれてしまった俊輔がその後に続いた。


里美は頻繁に起こる痛みを必死で堪えていた。
既に痛みは、10分間隔になっている。
それでも里美は、優しくお腹に話しかけた。

「ごめんね、もう少し待っててね、いまお父さんが
産婆さんを連れてくるからね」

ムアンギはお湯を沸かすのに懸命だ。
綺麗なタオルとシーツも用意した。

「早く。俊輔、早く…」


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