まめ太が驚いた一瞬を狙い、影が巻きついてきた。
この影は単なる蛇の妖しでは無かった。
この辺り一帯を荒らしまわった蛟(ミズチ)の精だったのだ。
イブが見誤ったのも無理からぬことである。
枯れ切った状態の蛟には、微かな妖力しかない。
琵琶湖畔に来たことで、その妖力が爆発的に上がったのである。

『おもしろい猫もいるものだのう…が、我に歯向かうのは
まだ百年ばかり早い。あの男を喰らう前に、ぬしから
いただくとするか」

ギリギリと蛟は、まめ太を締め付けていく。
幼い体はミシミシと音を立て始めた。

「ぐふっ…せ、先生助けて…」

(やれやれ…しょうがないねぇ。こんな長虫に手こずるようでは…)
まめ太の意識の下で穏やかな声がした。

「お、おばさん、誰?」

(お前の前世さね。とことんお前が追い詰められるまでは
寝ていようかと思ってたんだがね。キャー、という。
覚えておおき。それとおばさん、じゃない。姉さまとお呼び)

「キャー姉さま?」

(上出来だ。さて、まめ太。今からお前の意識のリミッターを外す。
そうすることで、お前は本来の姿を取り戻すことが出来る)


六へ