下坂屋のソフト。
屋上で祖母と並んで食べた、バニラ味のソフト。
もう、15年も前になる。
祖母の記憶は甦ったが、そこにいる知佳は
5歳のままなのだろう。

「知佳ちゃんありがとね、ばあちゃん長生きしなきゃ」

知佳はこみ上げる嗚咽を必死で堪え、笑顔を返した。
「そうだよ、おばあちゃん、ながいきしてね」

そうして、知佳と祖母は並んで七夕飾りを見つめた。
知佳は、その時ようやく判った。

目線を合わせれば、相手との距離が縮まることもある。
それは確かにある。
けれど、そっと横に並んで、同じ方向を見ることも大事なのだ。
焦らずに、優しい時間を過ごすだけでいい。
夕焼けを見たり、昼寝している猫を見たり、公園で遊ぶ子供達を
眺めたり、そうやって同じ時を過ごしてあげることも大切なのだ。
知佳は潤んだ瞳を拭い、オルゴールのネジをもう一度巻いた。

「おばあちゃん、もう一度歌お」
「ああ、いいよ知佳ちゃん」

ささの葉サラサラ のきばにゆれる
お星さまキラキラ 金銀砂子
五色のたんざく わたしが書いた
お星さまキラキラ 空から見てる

知佳はその夜、新しい短冊に
『おばあちゃん、長生きしてください』と書いて吊るした。
その短冊はクルクルと回り、満天の星を映した。