「ふ。早速、楽しませてくれるのか。ありがたい」

幸い、朝早い街道には、他に人影がない。
十兵衛は刀を抜き放ち、正眼に構えた。

「又佐、この場はまず、見ておれ。ああいう手合いは、
思わぬ攻撃をしてくる」

腕長は、両方の腕をす、と横に上げた。
田畑にある案山子のような十字型になる。
つま先を立てた十字が回り始めた。
鋭い山刀が空気を切り裂く音がし始める。

「これは凄まじい。間合いに入った途端、
切り裂かれてしまうな」
そう言いながらも、十兵衛に焦りは見られない。
むしろ楽しんでいるような口調だ。

腕長は、まるでコマのように回りながら近づいてくる。
途中にある枝は全て斬り落とされている。
人の腕ほどもある太い枝もお構い無しだ。

「凄まじい回転だ。だが、コマを止めるには」
言いざまに跳躍しようとする十兵衛。
回転の中心を止めれば、コマは止まると見たか。

腕長は、それを予想していたかのように、
一方の手を頭上に構えた。
これでは跳躍した十兵衛が落ちてきた時に切り裂かれてしまう。



七へ