テレビでは、訳知り顔のキャスターがパネルを指して解説していた。

『子供の目線で考えてみましょう』と記されてある。

「な、健太の目線で見るってのはどうだ」

言いながら早速、恭介は中腰で歩き出した。
佐和子も後から続く。
まるでアヒルの行進だ。
「いいか、健太の気持ちになって周りを見ろよ」

健太の気持ち、健太の気持ちと呪文のように唱えながら歩く。

天井が高い。
四歳の子供の目線で見ると、こんなに高いのか。
佐和子は徐々に健太の気持ちが判り始めてきた。
それは恭介も同じらしい。
「やたらと天井が高いなぁ…こりゃ怖いかもな。
昼間でも暗がりってのはあるもんだな」

よちよちとアヒルの行進はトイレまで続いた。

よっこらしょと腰を叩きながら、恭介は背筋を伸ばした。

「決まりだな、やっぱり子供にしてみたら、この家は広くて暗いんだよ」

そうね、と納得しかけた佐和子であったが、ある事に思い当たり、その言葉を飲み込んだ。

「ちょっと前までは大丈夫だったのよ?
それと何より、大きな梅干しは?」


「あ?ああそうか。今のところ見つからないな」

「もう少し調べてみましょうよ」

佐和子に言われ、恭介は渋々トイレの灯りを点けた。
少し面倒になってきたのだ。