「小賢しい真似を。貴様ら、じわじわと殺してやる」

福は頭を締め付けられている。
悲鳴すら上げられない。
先生は岩壁に押さえつけられている。
ピクリとも動かせない。
強力な粘着力を持つ糸であった。

「思い出した。土蜘蛛の記憶に残っていたわ。
お前、猫又だね?京都にいる筈じゃないのかい?」

先生はその体勢のまま、女に答えた。
「色々と事情がありましてね、今はこの町で世話になってるんですよ。
それより一つ、聞かせてくれませんか。
何故あなたは土蜘蛛のくせに女の格好をしているんですか」

もうすでに決着はついたという余裕のせいか、
女は、ふふんと鼻で笑った。

「ふん。伝説の猫又にしては他愛も無い。いいわ、聞かせてあげる。
私が何故、蜘蛛になれたかを…。私はここに死にに来たのよ。
男に騙され、お腹の赤ちゃんも流産してしまった」

女の顔が苦痛に歪んだ。
その当時のことを思い出したのだろう。

「全ての人間を恨みながら死のうと此処に来たのよ。
あんた達も見たでしょ、あの仏像。あの辺りまで
来て、私もあの仏像を見つけた。
なんだか癪に障ってね、必死になって仏像を
倒してやったのよ」
二十一へ