二人の体がストレッチャーに乗せられている。
あきらめきれないアランがもう一度ショーンと彰宏を見た。
ショーンは微笑んだままだ。
アランは、かつて一度だけその微笑を見たことが有った。
それは、家族全員で出かけたハイキングのこと。
頂上で広げたお弁当から、握り飯が転がっていったんだっけ。
皆で笑った。俺がまだ、平社員の頃だ。
あの頃はお客様の笑顔が楽しみだった。
いつからなんだ…俺が狂ってしまったのは…

悲しみを売る者には、悲しみが訪れる。
この点で、アランは決定的に山崎とは異なった。
ようやく、アランはその事に気付いた。
が、もう遅すぎる。
後悔と絶望に包まれたアランが山崎を振り返って言った。

「あんたは日本一のセールスマンなんだろ。私を説得しろ、
お願いだ。背中を押してくれ!」

山崎は実販の時、笑顔を忘れたことがない。
それが何よりの誇りであった。
だがこの時、山崎は長い販売人生で初めて、涙を流しながら売り込んだ。

「実販の山崎、今回は、お勧めの人間がいます。
我が息子、彰宏はあなたのお子さんの命と夢を背負っていきます。
お願いです、アランさん、どうか」

そこまでだった。
その先は涙に邪魔をされた。


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