真由加の瞳から、とめどなく涙がこぼれては落ちた。
「どうか、早くここから逃げて。私のことは忘れて逃げて」

「だけど君は」

「いいの。最後に利樹君に会えて良かった。さ、行って」

「そうはいきません」
成加が現れた。沙耶加と田畑を伴っている。

「真由加。あなた、その体を無駄にする気ですか。
長様が次に卵を産み落とされるには、どうしてもあなたの
肉と血が必要なのですよ?」

林田は震える声で言い返した。
「だったらあんたが餌になればいいじゃないかっ!」

成加の唇がV字型に上がった。笑っているらしい。
「わたしが亡き後、真由加が残れば…この家を滅ぼすでしょう。
それだけはできません。さ、林田様。真由加はあなたのことを
心から愛しているのですよ。蛹人になってあげてはくれませんか」

「林田様、逃げようとしても無駄でございます。
貴方様が飲み続けた水の中に、薬を少々混ぜておきました。
もうそろそろ、限界値を超えるはずです」
田畑の言葉で、ようやく頭痛の原因が判った。

そして、事実その通り、林田は意識を失った。
最後に聞いたのは真由加の悲鳴であった。