沖田は三日後の早朝、準備を整え、トラクターで家を出た。
一路、東京へ向かう。

話を聞いた村の年寄りが集まり、沖田を見送った。
家にある燃料や食料を持ち寄る。
それらは、トラクターに連結したリヤカーに山積みになった。

「すまんのぅ、皆の衆」

「何を言うとる、わしらの方こそ…」

「じゃあ行ってくるぞい。達者でな」

東京まで300km。トラクターの時速は8km。
気の遠くなるような旅が始まった。
旅費はほとんど無い。村人からの支援物資だけが頼りだ。
まずは、村役場に向かう。

沖田は道々、手書きのチラシを渡しながら進むつもりだった。
自分なりに懸命に勉強した成果を書き記してある。
デジタルとアナログの違い。
デジタル化の利点。
その問題点。
そして、相撲を見られないがゆえに、希望を失った
老女がいることを自らの手で書いた。

霞む目を騙しつつ、痛む手を氷で冷やしながら、
懸命に書いた。
それを村役場で、半ば脅かしつつコピーさせたのだ。

トラクターはゆっくり進む。沖田は、公園や
ゲートボール場などを見かける度、チラシを配った。
チラシを受け取るのは、その土地の主婦であり、
年寄りであり、子供達であった。

四へ