犯人は、おそらくこの家に以前暮らしていた男であろうと噂された。

恭介と佐和子は、突然として巻き起こった事態を茫然と見守るしか無かった。

佐和子の足元で健太が遊んでいる。
お気に入りの積み木だ。
大きな家を作っているようだ。

最後の最後に失敗したのか、その家がガラガラと音を立てて崩れた。



一週間後、恭介と佐和子は新しい家で、にこやかに引っ越しの荷物を開封していた。


陽光が満ち、爽やかな風が入る部屋を佐和子は満足気に見渡した。

古民家暮らしには未練は無い。

「さて、次はお皿を並べるかな」
箱を開けた途端、健太が前を押さえて現れた。

「おかあさん。トイレついてきて」

「なになに。こんな明るい部屋よ?もう怖くなんか無いでしょ」

「こわいの。へんなのがいるの」

恭介と佐和子は同時に答えた。
「そんなもの、いるわけないでしょ」


その時、天井から
かすれた声が聞こえた。
その声はこう言った。



『いるよ』