準備は整っている。
いつも通りやるだけだ。
何の気負いもなく、今日の空のように
晴れ渡った心がある。
これもまた、いつも通りの面々が俺を迎える。
「お願いしますよ、今年も」

「ええ。勝ちましょう」

「これだけは負けられませんからね」

さて、行くか。
闘いの場へ。

綱引き開始。

俺達のチームは、戦力的に見ると参加チームの中で最弱である。
大会規定を満たしてはいるが、如何せん平均年齢が高い。
他のチームはマンションの住民が多く、若く逞しい男達が多いのだ。
我がチームで戦力になるのは、俺を含めて五、六人といったところか。

が、やるしかない。
この綱引きを落としては、町内運動会で一位を狙えない。
皆の期待を背中に受け止め、俺は競技場へ足を踏み入れた。

太い綱が大蛇のように横たわる。
我々のチームの大半を占める老人達には、扱うのも難しい。
俺の指定席は列の最後尾、いわゆるアンカーと呼ばれる位置だ。

この太い綱をタスキ掛けにし、両足を踏ん張る。
その姿は金剛像のようだ。

競技委員の手が静かに上がって行く。
会場が一瞬静まり返る。

号砲一発、始まった。