このあたしが母親にと、政子は自分自身を嘲り笑ったが、それも長くは続かなかった。

政子のような女にも辛うじて母性が残っていたのだ。
その事に驚いたのは誰よりも政子自身である。

相手の男は誰だか判らない。とりあえず何人かに打ち明けると、一人の男が責任を取って結婚すると言ってくれた。

右一同代表、というわけだ。

見事に貞淑な女を演じ、妻となった政子は四カ月後、母になった。


ペットとの同居が許可されたマンションを新居に選び、政子は幸せを噛みしめていた。

すぐ隣にもう一棟、マンションが建築中だったが、窓を閉め切ればさほど気にはならない。

愛することにした夫と、赤ん坊とプルート。
政子は、しばらくは夜遊びを控えるつもりでいた。


9月になったが、まだまだ蒸し暑い夜が続いている。
窓を広く開け、風を通す。
夫はまだ帰っては来ない。
赤ん坊は隣の部屋で静かに寝ている。
泣き声もあげない。
ぼんやりと窓の外を眺めていた政子は、異変に気づいた。
余りにも静かだ。

政子は焦りの余り、四つん這いになりながら隣の部屋に向かった。

ベビーベッドに闇があった。

「プルートッ!」

政子の声に振り向いたプルートがゆっくりと身を起こした。

その柔らかな腹の下から、赤ん坊の顔が現れた。


三へ