会場が固唾を飲んで
見守る中、勇治の試食
が始まった。


するとどうした事か、
デレデレしていた勇治
の顔つきが引き締まってきた。

背筋もスッと伸び、
目に力が溢れてきた。


「光っちゃん。僕が
悪かった。大切な君を
泣かせてばかりで。
大事な人は君だけだ。」



青ざめた芳川が叫んだ。

「あ、あなた一体、
何をしたの!」


「小出光子をナメん
じゃないよ。あたしが
作ったのは、ブードゥ
に伝わるゾンビ復活を
アレンジした究極の一品!
『死人同然のダメ男を
生きいきと蘇らせる料理』さ!」


ガックリと膝をつく芳川。


勝利の拳を突き上げる
小出光子に、勇治が
近づいて言った。

「今の料理。効き目は
それだけじゃないな。」


「…え?」


「もう一つ効き目が
あった。それは、
『立派な父親になる』だ。」


「…ほんと?」




小出光子先生は一瞬だけ、少女のように微笑んだ。