俺が暮らしていたアパートの近所に、とても美味しいお好み焼き屋があった。

広島出身の梶谷さんという女性が一人でやっていたのだが、なんと梶谷さんは天海祐希に似ていたのだ。

勿論、広島出身だけあってお好み焼きも美味いったら無かった。
そして何より、話が面白い。

通っているうち、親しくなっていくのは当然だ。
お好み焼きの秘訣から始まり、もみじ饅頭の美味しい食べ方、広島の街の良さなどなど、色々な話が弾んだ。

それほど素敵な人だが、浮いた噂の一つとして無い。

純粋に(笑)不思議に思った俺は、ある日何気なしに訊いてみた。

「彼氏?いたけどね、あたし、結婚しちゃだめなの。
両親とも被爆したから、あきらめたの」
その時の梶谷さんの笑顔は、今でも鮮明に思い出せる。

涼やかで悲しい笑顔だった。

俺は、その言葉を聞いた途端に激しく後悔したのだが、隣に居合わせたオヤジが不細工にも言いやがった。

「ああ、そうか。ママさん広島だもんな、被爆二世か」


おんどれ表に出さらせっとオヤジの胸倉掴み、また来るわと俺は店を出た。

つまらない事を訊いてしまった後悔に胸を焦がしながら、念入りにオヤジを殴りつけていた。


8月6日、梶谷さんは店の中で静かに黙祷していた。

今はどうされているか、知る由も無い。


さて、久間とかいうオヤジが公的な場において、公的な立場で、とある発言をした。

「戦争を終わらせる為ならば、原爆投下はしょうがない」

そう思うのは勝手だ。
(それすらもどうかとは思うが)

だけどな、オヤジよ。
言っても良い事か、言っても良い場所かぐらい判断しなさいよ。

どうしょうもない?
どうすることも出来ないくせに何を言ってるのだ?


おんどれ表に出さらせっ!