「皆にも伝えてくれ
ますか。
これと同じ呪符を
見つけたら、すぐに
教えてくれるように。」

闇に消えるアムを
しばらく見送り、先生
は家に戻った。


目覚めて出迎えた福に
先程の呪符を見せる。

「先生、これは何処に
あったのですか?」

「3丁目の路地裏
らしいよ。
福やん、世界中を
廻ったことがあるだろ?
見覚えないかな?」

「…あります。この
匂い、忘れようと
しても忘れられません
。」

「誰?」

「…呂后。この匂い
は呂后の使う香の匂い
です。」

「呂后!なんとまぁ…
ある意味、バートリ
より質が悪いな。」

「先生、呂后はご存知
ですか。」


「いや、会ったことは
ないね。」

では、と福は説明を
始めた。


「あの女に私が初めて
出会ったのは、120年
前です。あいつは生者
でありながら、地獄に
自由に出入り出来る術
をもっております。

それによって地獄の鬼
どもを手下に使うとか。

未だに邪悪な生を
保っているのは、
おそらく地獄と契約
しているのではない
かと。」

先生がそこで口を
挟んだ。

「ということは、福
やんの地獄送りが
使えないってこと
かい?」


福の尻尾が力無く
垂れた。

正直な尻尾であった。


「ふぅ…そうすると
強力な選択枝が一つ
減っちゃうなぁ。
しかし、何故今ごろ
この町に現れたの
だろう。」

先生と福はそこで顔を
見合わせた。
二人同時につぶやいた。


「狙いは綾さんだな…」


とにかく、しばらくは
気配に注意して過ごす
事。
綾さんの身辺警護を
最優先する事。

この二点を決めて、
二人は眠りについた。