このところ、うんざりするような気候が続いている。
気温は上がるが、営業成績は下がる一方だ。
部長の叱責を思い出すだけで不快指数の針が
振り切れそうになる。
スーツの背中に嫌な汗を滲ませ、俺は駅に向かった。
途中で缶コーラを買う。
定期券を出そうとスーツの胸ポケットに手を入れる。
下を向いた視野に赤いハイヒールが入った。

ホームを目指す人たちの流れに逆らい、
女が一人立っているのだ。
ぼさぼさの髪、おかしな柄がプリントされた白いワンピースに
赤いハイヒール。
何処がどうとは言えないが、雰囲気が異様だ。

(少し危ない人かもな)
俺は一瞥だけくれてホームに急いだ。
いつものとおり、ホームは人で溢れ、
ただでさえ蒸し暑い夜に拍車をかける。
こんな夜は早く帰って、クーラーの効いた部屋で
冷たいビールを飲むに限る。
それを頭に描いただけで笑みがこぼれた。
せっかく買った缶コーラだが、ビールをより一層
美味しく飲む為に我慢して鞄にしまった。