次の日。
優一は、お茶を飲み終え、居間で猫と遊んでいる。
割れても惜しくないような茶碗を百円ショップで買ってきた。
とにかく一度、茶碗が割れる音が聞きたい。
それだけが目的である。
わけの判らない情熱に突き動かされてしまったのだ。
娘が嫁いでから、穏やかな日々が続いている。
毎日が同じ日の繰り返しである。少し煮詰まっている気がしていた。
茶碗が割れるぐらいでも、なんだかスッキリするんじゃないかと
思い込んでしまったのだ。

(一応、ルールは守らなきゃね)
自分が勝手に始めたことなのに、ルールも何もあったものじゃ
ないのだが、和佳子は義理堅いのだ。

「きゃぁっ」
わざとらしい悲鳴をあげ、手を滑らせた。
今度こそ、間に合うはずが無い。
夫は居間に居るのだ。ダッシュで駆け込んできても無理だ。

割れる。
日常が割れる。
和佳子は少し怖くなり目をつぶった。


五へ