その犬は突然、群れに襲いかかってきた。
大型犬のわりに俊敏なその動きは、餌を見つけた喜びに
よるものだった。
もう長い間、食べていないのだ。犬も必死であった。

真っ先にミニーが狙われた。
弱い者が狙われるのは、自然の掟である。

「ミニーちゃん、逃げて!」
「おかあちゃん、こわいよー」

犬は、泣き叫ぶミニーを隅に追い詰め、大きな口を開けた。

その鼻先に飛び出した者がいた。
チロであった。

「早く逃げろ!クソガキっ!」
犬の鼻に爪を立て、必死でぶら下がる。

逃げたミニーをさとこがしっかりと抱きしめた。

なおも鼻にしがみつくチロは、牙を立てられても
離そうとしない。腹が破れ、血が流れ出した。
ハナクロも犬の背中に飛び乗り、懸命に爪を立て、
首筋に噛みついた。
ドドも前足に噛み付く。

チロは、とうとう振りほどかれた。壁にぶち当たり、
ギャっと一声だけ鳴いた。
犬はあまりの痛みに、逃げていった。

「チロちゃん!」
ハナクロが駆け寄る。

「くそ。柄じゃないことをやっちまった。あのクソガキのせいで…」
血は止まらない。

「チロちゃん、立てるか?僕が見えるかい?」

「ハナクロさんか。あのクソガキは無事だったか…」

「あぁ。無事だよ。ありがとう、チロちゃん。」

チロは答えない。
丸くなったまま、既に死んでいた。

「チロちゃんっ!」

仲間は7匹になった。