その頃、江戸湾沖で人知れぬ闘いが始まろうとしていた。
水の流れに身をまかせ、ゆらゆらと漂っているのは恵比寿だ。
何が嬉しいのか、にやにやと笑っている。
その笑みは、人々が信仰する恵比寿の姿とは違い邪悪なものであった。
大黒天が人を改造して作った恵比寿なのだ、真っ当な筈も無い。
ただ一筋に、大黒天の命令のみに従っているのであろう。
「もし。そこにおわすは恵比寿殿とお見受けいたす」
海底の水流に乗り、言葉が伝わってきた。
驚いた恵比寿がふりむくと、そこに居たのは黒い大きな坊主。
「…変わった物が来たのう。おまえ、何者じゃ」
「わしは海坊主。この辺りの海を仕切る者でござる。
恵比寿様、その結界を解いてはくれんか。
魚達が迷惑しとるんじゃ」
恵比寿は邪悪な笑みを浮かべたまま答えた。
「それは出来ぬ相談じゃな。早々に立ち去られよ。
天海様の命に背くわけにはいかんのじゃよ。
それに心配せずとも、もう少しの辛抱じゃ。
柳生十兵衛さえ倒してしまえば、事は成ったも同然」
恵比寿の口から柳生十兵衛という言葉が出た途端、
海坊主の体が、ぐわっと膨らんだ。
六十八へ
水の流れに身をまかせ、ゆらゆらと漂っているのは恵比寿だ。
何が嬉しいのか、にやにやと笑っている。
その笑みは、人々が信仰する恵比寿の姿とは違い邪悪なものであった。
大黒天が人を改造して作った恵比寿なのだ、真っ当な筈も無い。
ただ一筋に、大黒天の命令のみに従っているのであろう。
「もし。そこにおわすは恵比寿殿とお見受けいたす」
海底の水流に乗り、言葉が伝わってきた。
驚いた恵比寿がふりむくと、そこに居たのは黒い大きな坊主。
「…変わった物が来たのう。おまえ、何者じゃ」
「わしは海坊主。この辺りの海を仕切る者でござる。
恵比寿様、その結界を解いてはくれんか。
魚達が迷惑しとるんじゃ」
恵比寿は邪悪な笑みを浮かべたまま答えた。
「それは出来ぬ相談じゃな。早々に立ち去られよ。
天海様の命に背くわけにはいかんのじゃよ。
それに心配せずとも、もう少しの辛抱じゃ。
柳生十兵衛さえ倒してしまえば、事は成ったも同然」
恵比寿の口から柳生十兵衛という言葉が出た途端、
海坊主の体が、ぐわっと膨らんだ。
六十八へ