「なんだよ、なんなんだよ、お前は」
私も大人しいほうではない。
どちらかと言えば喧嘩っ早いほうだ。
「面白くないから廃棄されるんだよっ!人のせいにすんなっ!」

「く。くそ、言い返せない。まぁいい。よし決めた。あんたにも憑いてやる」

「はぁ?なんのことだ」

ニヤリと笑った。
Vの字の髭がヒクヒクと動く。
「付喪神は御存知か。本来は物に憑く神だ。転じて妖怪となる。
では、本の付喪神が人間に憑くと、どうなるか想像できるかな?
その本に書かれてある内容全てが、あんたの脳味噌に焼き付けられるんだよ」

なんだと。
男が今言ったことを私はじっくりと考えてみた。
本の内容全てが自分の知識になるというのか。
それは…
もしかすると幸運ではないだろうか。
英語の辞書、六法全書、EXCEL検定、日本地図、歴史書、
なんなら雑学大全でも構わない。
全てが頭に入るなら、むしろ歓迎だ。

「さ、行くぞ!あんたの脳味噌に憑いてやる」
叫びながら男は左手を挙げた。