結局、耕一は、小さな広告会社に勤めて、
そこで知り合った早由里と結婚した。
早由里を紹介したいと電話を入れたが、
母はオロオロするばかりで話が進まない。
「そんな名前の息子はおらん」と父親が遠くで叫ぶのが聞こえ、
耕一は腹立ち紛れに電話を叩きつけた。

早由里も天涯孤独の身の上であった為、結婚式は二人きりだった。
新婚旅行にも行けず、狭いアパートで暮らし始めて二日目の朝。

「耕一さん、お母様から荷物が届いてる」

「えらく大きな荷物だな?なんだろ」

お祝いのつもりだったのだろう。
中からは米と食料品が現れた。
拙い文字で書かれた手紙には、こう書かれてあった。

『結婚おめでとう。大切にしてやんなさい。父さんも母さんも元気です。
父さんは、時々さびしそうにしてます。今とは言いませんが、
いつかきっと帰ってきてください。父さんも母さんも待ってます。
そうそう、あなたの部屋はそのままにしてあります。
早由里さんえ。 わがままですが、人一倍優しい息子です。
なにかあったら、叱ってあげますから、遠慮なく言いなさいね』

その手紙を置いた卓袱台を挟んで、
耕一と早由里は声をあげて泣いた。

慎ましやかに暮らす二人に、大きな幸せが訪れた。
愛美の誕生である。