ゆっくりと大会本部に向かう。その後ろをテルが胸を張って続いた。
競技用のディスクを受け取り、しばらく手に馴染ませる。
ゼッケン番号は55。源次の好きな番号だった。
「松井と同じ背番号だな。これは験が良い」

「どう?源さん、感触は」

「まずまず、だね。いつも使っているのと、そう大して変わらん」
二、三度軽くスナップをかけて放り投げてみる。

「良かった。大会によってはサイズが違ったりするからね。
まずはラッキー。テルは?」

テルはゆっくりと体を休めている。

「やっぱり凄いわ、テルは。無駄な体力は一切使わないってわけね」

源次の出場まで後五人。
さしもの源次も、少し緊張してきた。

リラックス、リラックスだ。いつもの成果を見せれば良い。
わしとテルなら必ず勝てる。自分に言い聞かせる。

『ゼッケンナンバー55.岡村源次さん』

ゆっくりとスローイングラインに進む。
彼が選んだのはノーマルスタートだ。犬と共に
スタートラインに進み、テルと共に合図を待つ。
練習スローイングは断った。
少しでも体力を残しておこうと考えたのだ。
70歳の体に、この熱気は応える。手首にも不安がある。

『準備はよろしいですか?』

源次は軽く手をあげた。
テルも軽く尻尾をあげた。


十一へ