「最後にあなたはニヤリと微笑んでいた」

「確かにそのような事は言ったかもしれません。
それによって、あいつの意識が粉々に壊れたかもしれない。でも、それを実証できる人は何処にもいない。」

精神科医は再び歩き出し、墓の前に立った。
花を手向け、線香を点ける。
目を閉じて、手を合わせながら精神科医は言った。

「可愛い息子だった。
妻と別れてからも、私を慕ってくれた。
あの日も、園が終わってから食事に連れていく約束だったんだ。
大好きなオムライスを食べさせてあげるつもりだった。

…私を逮捕しますか?」

刑事は両手をあげた。
「いえ。何の証拠も無い。ただし、私個人はあなたを連行したい。」


「どちらへ?」

「旨い酒を呑ませる店が有るんですよ。昼間っからはマズいですか?」

精神科医は唇の端だけを上げて笑った。

「かまわんですよ。…それは祝杯ですか?」

今度は刑事が笑う番だった。