俺は詳しい歌詞を知らなかったのだ。


『海行かば 水漬く 屍

山行かば 草むす屍

大君の辺にこそ死なめ

かへり見はせじ』

万葉の歌人である大伴家持の長歌の一節らしい。

なんと悲しい歌か。
気がつくと、年配の男性達は全員が泣いていた。

歌い終えた俺に向かい、深々と頭を下げ、彼等は出て行った。

階段を降りながら、歌う声が聞こえてきた。

『うさぎ追いしあの山

小鮒釣りしかの川』


やけくそのような歌声は、けれどもどんな歌よりも俺の心に響いた。




その年の盆、俺はいつもより早く帰省した。