「くそ。銃は止めろよ!エディ、ちょっとそれ貸せっ」
木村はエディからボトルを奪い取ると、船員目掛けて思い切り投げつけた。
クルクルと回りながらボトルは、見事に船員の頭に当たった。

「ひゅぅぅ~、やるなジャポネゼ!さすがWBC優勝国だ」
エディの口笛が合図のように、警察隊が到着した。

「間に合ったな。これであのゴリラ達は無事に保護されるだろう。
何しろ、国際絶滅危機種だ。手荒に扱えば、全世界から非難される」

木村の予想通りだった。
ゴリラ達は警察隊の手により、麻酔弾を打たれ、無事保護された。
クォバディス号の船員は、船長以下全員が逮捕された。
事件を最後まで見届け、木村は店に戻り、新品のボトルを開けた。

「エディ。一杯行けよ。おごるぜ」

「いいのか」

「あぁ。勇敢なゴリラに乾杯だ」
「だな。勇敢なゴリラに乾杯」

馬鹿でかい夕陽が海を染めている。
グラスを目の当たりに掲げ、夕陽を映す。琥珀色が濃くなった。
夕陽ごと飲み干し、木村はボトルをエディに渡した。

「贈り物だ。俺は明日、日本に帰る」

「急にどうした?」

「家族に会いたくなった。このままじゃゴリラに負けちまう」

ゴリラと人のDNAは、たった2%しか違わないのだ。
ならば俺にも家族が愛せるはず。
木村は店を出る時、日本語でそう、エディに言った。

「おい、木村。なんだ、何て言ったんだ。こら、ジャポネゼ!
勝ち逃げはずるいぞ。おい、待てったら…置いてくのかよ、俺を」

エディの叫びに木村はゴリラを真似て手を振った。

その姿を見て、エディは、木村が家に帰るつもりだと判った。
急に酔いが回ったエディは、同じようにゴリラの真似を
しながら夜の町に消えて行った。