速度を上げたトラック
の振動でミルクは
ようやく目を覚ました。
降りようとした
ミルクだったが、
入り込んだ箱の上に
荷物が被さっている為
少ししか蓋が開かない。

ミルクは遠ざかる家と
家族に向けて必死で
鳴いた。
だがその声は届く事
は無かった。

ミルクは流れていく
景色をジッと見続け
ていた。
もう一度ここに帰る
為に本能的に始めた
事であった。

二時間後、トラックが
敦賀市内に入った頃、
ようやく渡辺家は家族
が居なくなった事に
気付いた。

「ねぇ。ミルクは?」

「お母さん知らない
わよ。散歩じゃない?」

「うーん。もう暗くなる
よ。寒いの嫌いじゃん、
あいつ。」

母娘が呑気な会話を
交わしている頃、
ミルクはようやく
自由になっていた。

運転手が荷台の物音
に気付いたのだ。
何だろう、と箱を
どけた途端、白い猫
が飛び出したので彼は
驚いてしまった。

「うわ。何だぁ?
いつ乗ったんだ、お前
あ、おい何処へ行く。」

ミルクは今来た方向へ
歩き出した。
本当は走りたい所
だったが、野良猫の
頃に傷つけられた足の
せいでうまく走れない
のだった。