熊もニヤニヤと笑いながら、リズムよくハモの骨きりを続ける。
つくね亭の用心棒と自称する金髪の常連客、パツの注文である。

いつものように穏やかな夜がつくね亭に訪れていた。
朗らかな笑い声が何より好きな熊は、今夜も良い夜になったと満足気だ。

だがその時、穏やかな夜を引き裂くように男が飛び込んできた。
「く、熊さん、ちょっといい?」

「おや、あかさん。どうしたの、そんな急いで」

近所にある理容室のおやじ、あかさんだ。
「後藤さん、倒れた。今夜が山かもしれねぇ」

リズム良く続いていたハモ切りの音が止まった。
「心臓か?持病だったよな」

「あぁ、なんとか持ちこたえてはいるけどな、
でな、ここからが相談なんだよ。
熊、おめぇ、どこかでホタル手に入らねぇか」

店にいた全員が一斉に声をあげた。
「ホタル?」

今日もカウンターの端に陣取っている骨董屋のねこやが
熊に向かって首を振る。
「無理だなぁ、熊さん。この辺りでホタルが見られるところは
ないねぇ…」

一人でラムを煽っている和菓子屋の主人、輪音もうなづく。
何故か肴は和菓子だ。
「だからこそ、後藤さんはこの辺りでホタルを育てようとしていたのです」

あかさんが見る間にがっかりと肩を落とした。
「やっぱり無理か…ホタルを見せれば元気を
取り戻す気がしたんだがなぁ…ちくしょうめ」
五へ