「ちょっと地味っすかね?」

「おまえの基本値が判らんわ」

俺は笑いながら、それとなく尋ねた。
「あれ、中古やろ。ナンボやったん」

「へっへ。聞いて驚くな、なんと3万円!」

やはり。
だが、嬉しそうなトモを見ていると、何も言えない。
何かを感じたとは言え、あくまでも俺の印象でしか無い。
なにが起こったわけでも無いのだ。
それに、彼らの全国ツアーは近い。
今更、車を替えるわけにもいかない。
俺は、事故にだけは充分注意するように言って送り出した。
ママさんに連絡し、事情だけは伝えておいた。

彼らの最初の目的地は名古屋。
大きなライブハウスは、彼ら目当ての客で満員であった。
熱心なファン達のおかげである。
これだけ最高に盛り上がると、そのまま打ち上げになだれ込むのが常であるが、貧乏ツアーではそうもいかない。

ツアー最終日の打ち上げに想いを馳せながらメンバーは車に戻った。

少しだけ仮眠を取ってから次の街へ向かう。

静かな車内に、突然悲鳴が上がった。

ドラムの芳雄だ。
夢でうなされている。

「熱い…熱いよ…」

そう言って苦しんでいる。

他のメンバーが揺り起こしたが、芳雄は熱い熱いと譫言を繰り返す。